2023年ベスト小説『成瀬は天下を取りにいく』
昔は小説ばっかり読んでいた。
それが社会人になってビジネス書ばかり読むようになって、小説は月に数冊だけ。
つまらない奴になっている感じがする。
新しい作家も知らないので、どの小説を読むかの基準も持っていない。
そういう時は素直にランキング上位を読んでみよう。
読書好き雑誌『ダ・ヴィンチ』
1月号はBOOK OF THE YEAR2023
小説部門の1位が『成瀬は天下を取りにいく』
『成瀬は天下を取りにいく』の作者は
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2018年「二位の君」で第196回コバルト短編小説新人賞を受賞(宮島ムー名義)。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。同作を含む本書がデビュー作。(本書カバーより)
『成瀬は天下を取りにいく』のあらすじと受賞歴
2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。
2023年、最注目の新人が贈る傑作青春小説!(Amazonより)
2023年受賞歴
静岡書店大賞小説部門大賞
「ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2023」小説ランキング1位
「読書メーター OF THE YEAR 2023-2024」総合1位
「中高生におすすめする司書のイチオシ本2023年版」第1位
「キノベス!2024」第1位
書店員として働いていた身からするとキノベスは比較的信頼できる賞。
私が働いていたところを含め、売り上げ高かった作品が1位になる中、キノベスは渋いところを1位にしていたりして、いつもおもろいなあと思っていた。
『成瀬は天下を取りにいく』の魅力
漢字で書いてもいいところをひらがなにしてあったりと文体も含めすごく読みやすい。
それも踏まえてこの本の魅力は主人公の成瀬がかっこいい、魅力的ということにつきます。
連作短編集という形ということもあるけれど、ストーリー重視ではなく、人物重視の作品。
どこがすごいってわけではないのに、成瀬の魅力が半端なく伝わる。
こういう風に生きたい。こういう風になりたいと強く思わされます。
2024年1月には続編が発売されるとのこと。
楽しみ。
登場人物のキャラクターでいけるから続編書きやすいということよりも、かなり期待値があがるので、次作はプレッシャーだろうなと思う。
何にせよ楽しみ。
引用
わたしはギネス世界記録が百二十二歳であることを根拠に、さすがに二百歳は難しいのではないかと伝えた。すると成瀬は平気な顔をして「島崎も含め、その頃にはみんな死んでるから確かめようがない」と言った。わたしは成瀬あかり史を見届けられないことを残念に思うと同時に、できる限り成瀬をそばで見ていようと誓ったのだった。(P9)
「初挑戦はこんなものだと思っていたが、やっぱりお笑いの頂点は遠そうだな。一応出るつもりでいるが、来年になったらもっと別のことをやりたくなっているかもしれない。どちらにせよ、これで一生『M-1グランプリに出たことがある』と言えるようになったな」(P74)
春休みに意を決して縮毛矯正をしたところ、五時間の施術の末にストレートの紙が手に入った。これで普通の女子と同じスタートラインに立てたと思った。(P121)
一人になって改めてまわりを見ると、いろいろな人がいる。さっきは派手な人ばかり目に入っていたけれど、地味な雰囲気の人もいるし、普段着でふらっと来たような人もいる。わたしの描く相関図の外で暮らしている人たちも、それぞれの相関図の中で生きている。これだけ多くの人がいる世界で、線がつながるなんて奇跡みたいな確率だ。(P140)