2023年ベスト小説は続編まですごかった『成瀬は信じた道をいく』
映画も小説もドラマもえてして続編は1作目を超えられないもの。
それは1作目のヒットを受けてから2作目を作るから、というのもあるし、読者が慣れてしまうというのもあるだろう。
2023年で個人的にも1番面白かった作品『成瀬は天下を取りにいく』
この作品は連作短編になっていて、ストーリーで魅せる作品ではなくて、登場人物の魅力で魅せる作品だったので、続編を作るのに向いたタイプの作品ではあると思う。
しかし、逆にいえば、登場人物の魅力重視で魅せる以上、読者がキャラクターに慣れてしまうという可能性も高いともいえる。
そんな中、続編も全く飽きさせず、前作並みいや、それ以上の面白さを持った作品になっていた。
すげえなこの作家さん、と素直に思ってしまった。
今後追っていく作家のひとりになった。
『成瀬は信じた道をいく』の作者は
著者は宮島未奈さん。
1983年静岡県富士市生まれ。滋賀県大津市在住。京都大学文学部卒。2021年「ありがとう西武大津店」で第20回「女による女のためのR-18文学賞」大賞、読者賞、友近賞をトリプル受賞。2023年同作を含む『成瀬は天下を取りにいく』でデビュー、10万部を突破し話題になる。本書はその続編にあたる。(本書カバーより)
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前作もすごすぎる
続編ではないので、本作だけでも十分ですが、どうせ読むなら前作『成瀬は天下を取りにいく』から読むのがおすすめです。
前作は昨年から今年にかけて多くの賞を受賞している作品です。
引用
「先のことはわからないからなんとも言えないが…。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」
何になるかより、何をやるか。わかるようなわからないような言葉だけど、成瀬さんが言うとかっこよく感じる。(P26)
成瀬はわたしのかごの中の商品を一瞥して「三四〇〇」とつぶやき、商品のスキャンをはじめた。
「なにそれ」
「かごの中身を見ただけで、合計金額を算出する練習をしているんだ」
「ユニクロかよ」
どんな人生を送ればこのように泰然自若と構えていられるのだろう。(P97)